

Destiny〜微睡む夢に重なる想い
¥500 税込
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サークル名:葵月
作家名:冴月希衣
紹介文
【再生の花、睡蓮が時を繋ぐ恋愛ファンタジー三部作】
第一部:古代エジプト(ツタンカーメン、アンケセナーメン)
第二部:19世紀フランス(モネ)
第三部:現代日本
切なさと優しさが混在する三つの時代の純愛譚、お楽しみください。
【試読:第二部より抜粋】
初夏。むせるような草いきれが全身を包み込んでくる朝、薔薇の生い茂る小径に小柄な姿が現れた。人工的に作られた池のほとりまで慣れた足取りでやってきたその人物は、ひとりの男に呼びかける。
「クロード!」
「あぁ、シャルロット。おはよう」
「やっぱり、ここに居たのね。あなたに手紙よ、ムッシュ。差出人は、わかるでしょう? ギュスターヴよ」
ギュスターヴからの手紙を、男はいつもすぐに読む。小難しい表情で手紙を読んでいる寡黙な男は、絵を描くためにジヴェルニーにやってきた。
壮年の画家の名は、クロード・モネ。
村の土地を購入し、川から水を引いて自身の理想の庭と池を造営中である。自身が造営した庭を、クロードは『水の庭』と呼ぶ。彼がその芸術性に傾倒している東の島国、日本の庭園を模しているらしい。
しだれ柳が水面に影を落とす池には『太鼓橋』という名の緩やかな傾斜を持つアーチ型の橋がかかり、大気の揺らめきがさざめく水面を埋め尽くすように浮かんでいるのは、一本の深い切れ込みが入った、特徴のある睡蓮の葉。この睡蓮のために付近のリュ川から水を引いて造られたのが、彼の『水の庭』だ。
「……ほう。ギュスターヴは、明後日、こちらに来るらしい」
「そのようね」
ぼそりと零れ落ちた低音に、まだ青葉のみの睡蓮を見つめながらシャルロットは短く返す。クロードに手紙を寄越したギュスターヴの来訪予定は彼女も知っていた。画家へのものとほぼ同内容の書簡が彼女にも届いていたのだ。
ふたりに書簡を寄越したギュスターヴ・カイユボットは、今、おもむろに池のスケッチを再開したクロードのパトロン。かつては、ドガやルノアールとともに展覧会に出品していた写実主義の画家だったが、近年、絵画のコレクターへと転身した。パリの上流階級出身の資産家だ。
シャルロットを緑豊かなジヴェルニーに連れてきてクロードに引き合わせた実業家は、彼女の恋人でもある。
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