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女子大生純文学作家は異世界に転生したくない!?
¥880
サークル名:水と心 作家:水野心 イラスト:猫城寺ユーリ 高橋ひまりは、十八歳の時、自らの青春を小説にし、賞を受賞。大学にも合格し、春に東京に上京。学生生活と文壇デビューを期待した。その幸せは約束されていたはずだった。しかし、突然発生したCOVID-19。世界はパニックに陥り、ひまりは 大学二年の春からずっとリモート授業となり、味気ないぼっちの毎日。勉学による精錬も恋物語(ロマンス)も皆無だった。ほんとうに。 ひまりの心は自然と文学に向き、数多く小説を書いた。それを自分に賞を与えた出版社に持ち込んだ。そしてこう言われる。 「もう純文学の小説は売れない、COVID-19も落ち着いた今、人は出会いを求めている!、マッチングアプリでたくさんの人とデートして体験記を書く!、これで決まりだよ!、『文科系エロ』ってやつだね」 文学まで終わったなんて! その時、ひまりに声をかける人物が現れた。理工学部の准教授・十郷だった。 「君、異世界に行ってみないか?」
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六月の花嫁
¥600
サークル:文章・創作のサークル 作家:紫りえ Ni ふむふむともくもく 2020年。世界に蔓延したウィルスの影響により、 女性は結婚式を延期せざるを得なくなる──。 2019年。婚約し、男女が共に住むことへの碧き感情の花嫁の手記。 花嫁の日常の機微はいつしか世界中に蔓延したウィルスの下を書き記す。『六月の花嫁』 緊急事態宣言、2度目の緊急事態宣言、そして、春の物語の短編集。 ■ 2020/04/26 結婚式を延期にした日 当初、緊急事態宣言が延期になるかどうかを見届けてから決定するつもりでいた。それが私達の挙式のぴったり1ヶ月前だったし、第三者的な判断基準になると思った。 挙式までの準備期間としては既に2ヶ月前を切っていた。どんな式を挙げるのかによるけれど、この時期には手作りしたいものを進めたり、当日必要なものを購入したりする。前撮りもこの時期にする人が多い。人によってはエステに通う人もいるし、CD原盤を探したりとなにかと奔走する時期になる。 母にはアートフラワーブーケを作ってもらう予定で、そのブーケを前撮りに使って写真に残しておきたいと思っていた。 けれど、アートフラワーを売る大きなお店が休業になってしまった。オンライン販売はしているが、母は「ボリュームも色も見ながらでないと難しい」とオンラインのリスクの高さを懸念していた。 一方で、前撮りスタジオとも連絡がつかなかった。緊急事態宣言が解除されたとしたらその翌日が予約日だった。緊急事態宣言が出されるよりも前にたまたまその日に予約を入れてしまっていたのだが、お店自体もその日から再開予定となっていた。 緊急事態宣言の解除と継続、どちらにしてもスタジオが当日やるのかやらないのかわからなかった。予定通りやるとしたら、母のブーケはできていないから、そのブーケを使った撮影はできない。やらないとしても、いつスタジオが開くのかもわからない。未来に予約を入れたとしても、アートフラワーのお店の方もいつ開くかもわからない。 何も予定がたたなかった。そのことに気付いたのは仕事の合間の昼下がりだった。 友達にそのことについて愚痴をこぼした。旦那さんに言ったら、さくっと延期の話になるのが目に見えていたけど、それはまだ受け入れられなかった。でも、どうにもならないこともわかっていた。どういう返事が欲しいのかもわからなかった。ただ、もう当日どうこうだけではなく準備にまで支障をきたしていることにとても被害を受けた、という感覚だけが強く胸に残ってしまった。 ゲストの健康面や不安を考えて、というのは前提として頭にずっとあった。慶んでといってくれても、新郎新婦共に、自粛のこのご時世に普通に働く職なので尚のことだった。それでも皆がやってほしい、と言ってくれていたからつい、そこについてはみんな覚悟の上だから、とおざなりになっていた。結婚式の準備が忙しくなってくる時期だったから尚のこと、前提にありつつも横に置いていたように思う。 「完璧にやろうとしたら支障がありすぎる」 と友人からは返答があった。 あなたは他人を跳ね除けて理想を求める人、という言葉に聞こえてしまった。 「元々なら当たり前にできたことを、その中で何は死守して、何は譲ってもいいのかを考えるのは辛いね」 何かを捨てることが前提の彼女の優しい言葉は 昔流行った、ラストシーンにはベランダから転落する以外の選択肢がなくなるゲームのようだった。 そのあとも私の愚痴に「そうだよね」と繰り返して返事をくれた。もうそれ以上に言いようがなかったのだと思う。 帰る前に旦那さんに、絵文字だけを羅列した象形文字みたいなメッセージと共に、「詰んだ」と送った。文字に起こすには 未来の予定のために事前にこれをしてあれをしてと遡って話をするのが大変だった。結婚式はそういうものだ。当日に合わせて時期を決めてある程度機械的に動くのだ。 帰ってから一連の こういう準備の支障が出るのだという話をした。とにかくどこもかしこもお店がやっていないから、もし6月の挙式までにコロナが収束したとしても、準備のほうが全くできないということが伝わっていればいい。その時のわたしにはそれが1番の理由だった。周りのことを思うだけの余裕がなかった。 私にそれだけ、「周りを気にしないで自分の思うようにやっていい」と全力で伝えてくれた友人がいたからだった。 「どうしようか。延期するしかないかなあ」 まあそうだろうね、と言葉にまだ出したくなかった。代わりに今までなぜか出てこなかった涙が溢れてきた。 普段以上に手を洗ってうがいをしていた私を狭い洗面所で、旦那さんは何も言わずに抱きしめてくれた。何が悲しいのかわかるようなわからないような。延期は視野に入れていたけど、まだそう思えていなかった。本当に延期を決定することにやっとやっと向き合った結果がこの涙なのだ、と思った。 肩に顔をくっつけて、黙って泣いていた。
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四節の輪舞曲(ロンド)
¥600
サークル:文章・創作のサークル 作家:森野ひよこ 季節を「四節」とし、5つの散文詩と4つの短編集を収録 ■散文詩「旅立ち」 空気の冷たい午前4時 騒がしいほど静寂な世界で目が覚める 私は、軽く髪を梳き 着替え 顔を洗う 目の前にある左右対称な私の顔 声の出ないその唇が言葉を紡ぐ Are you happy? 私は答えず口の端を上げる 彼女も気づいて笑い返す 鍵を開け 外へ出ると 寝過ごした太陽が慌てて起きだした 私は見つからないように 反対方向にアクセルを踏む どこへ行こうか 今日は家出記念日 ■「桜との約束」 三月六日。 大学の合格祝いとして家族で外食した日、両親から離婚することを告げられた。 父がほとんど家に帰らないことも知っていたし、どうやら他に女性がいることも知っていた。そのため、離婚の話自体は、ああ、やっぱり、とすんなり受け入れた。 そして、自分でも驚くくらい冷静に、私の学費のことを聞くことができた。 「明莉は心配しなくて大丈夫よ。大学の授業料はお父さんが出してくれるから。生活費はお母さんがなんとかするわ」 母は安心させるように私に微笑んだ。おそらくその結論が出るまでは、かなり労力を必要としただろう。母は私に気を使わせまいと、何でもないようにふるまっていたが、表情にはいつも疲労が濃く表れていた。 「それで、明莉。本当は一人暮らしをさせる予定だったのだけど、さすがにそれぞれの場所で生活するのは、ちょっと辛くて……」 なんとかすると言っても、今までスーパーのレジ打ちだったのだ。当然だと思った。 「いいよ。一緒に引っ越そう」 私は明るく言った。私と母は翌日、大学近くのファミリー向けアパートを契約し、四月二日に引っ越すことに決めた。 祖父が危篤のため、実家へ行かなければならなくなったのは、離婚の話から三日と経っていない頃だった。顔を覆ったまま、心底嫌そうに母は告げた。 母は名家の長女だったが、半ば駆け落ちのように父と一緒になったと聞いている。だから、盆正月に帰省することはおろか、一切連絡を取ることが無かった。母の弟にあたる夫婦が実家で暮らしている、ということくらいしか知らなかった。連絡先も知らせていなかったらしい。 だが離婚の手続きの際、他に頼る先が無く代々お世話になっている弁護士に連絡を取ったため、そこから祖父の危篤を聞いたそうだ。祖父からはどうしても一目会いたいと常々依頼されており、いつ何があってもおかしくない状況の今、話ができるうちにどうしても会ってほしいとのことだった。 離婚の財産分与の相談をしていることもあり、強く突っぱねることができず、母と私は実家へ向かうことになった。 実家につく前から、申し訳なさそうに何度も母が謝る理由は、実家についた瞬間理解できた。叔父・叔母の敵意のこもった視線を受け、私たちは小さくなりながら挨拶をして敷居をまたいだ。 着いて早々、私たちはベッドで眠る祖父の顔を見た。顔には多くの皺が刻まれており、深い皺と見紛う小さな目は閉じられていた。酸素吸入器を動かす機械音が聞こえるくらい、安らかに眠っている。主治医の大田先生の話では、もう内臓の動きが悪く、時間の問題らしい。数時間ごとに目を覚ますとのことだったので、無理やり起こすのではなく、自然と目が覚めるのを待つことになった。 叔母がお茶を入れて、母と私の前に無造作に置く。母は、ありがとうございます、と丁寧に頭を下げた。私もそれに習い深々と頭を下げる。 「保代さん、明莉はこの家にはじめて来るの。良かったらお庭を見せてあげても良いかしら」 「あら、せっかくお茶を用意したのだから、せめて美里さんは召し上がって。ひさしぶりにお会いしますし、積もる話もありますし。明莉ちゃんはいってらっしゃい」 叔母は作り笑いをしたまま、私たちの顔を見比べる。叔父は足と腕を組んだ姿勢のまま、顎を横へ降った。勝手に行け、ということだろう。母が私に小さくうなずく。私は、逃げるようにその場を去った。 立花家の庭は広かった。冬でも緑色をした木々、石灯籠、大きな池の中央には島があり、そこへ続く橋が架けられている。島には一部屋分くらいの簡易な建物があった。壁が無く、柱と屋根と床がある。能舞台というよりは、お茶を飲みながら周囲の景色を鑑賞するのだろう。その建物の向こう側にも橋が架かっていた。 私は橋を渡りながら、体を震わせた。三月とはいえ、まだ肌寒い。コートを着ているものの、水辺から冷気が上がってくる。 島から向こう岸へ渡ると、そこには大きな樹が枝を広げていた。樹齢何百年と言われても素直に信じられる。柳だろうか。枝先は立花家の塀を軽々と超えて、外の大通りまで伸びている。 葉のない枝にそっと顔を近づけると、赤いつぼみがあった。ああ、しだれ桜だ。 そこまで考えて、桜の幹に手を添えている人影に気づく。同級生くらいだろうか。ワンピースにボレロ、蝶々結びの赤いリボン。お嬢様高校の制服といったいでたちだ。私に気づかないのか、ずっと彼女は樹のそばを動かない。肩まで伸ばした真っ黒な彼女の髪が、冷たい風に揺れる。私は思わず、コートを握りしめた。 「ねえ、寒くないの?」 彼女は驚いたように、振り返る。無遠慮に顔を近づけ、私を上から下まで眺めると、彼女は口を開いた。鈴のような、美しい声だった。 「へぇ、あなた、私が見えるのね」 彼女は興味深そうに私の顔を覗き込む。彼女の瞳が、光の加減で深緑色に見える。
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金木犀の香り
¥1,200
SOLD OUT
サークル名:青恋文庫 作家:逢坂海荷 イラスト:菅澤捻 【キャッチコピー】 あなたの恋は、きっとその人に残り続ける。 【あらすじ】 一人の女性(友美)の恋愛を男性視点で追った連作短編集。友美に恋した男性たちは別れた後も想いと後悔を抱えながら生きていく。友美が残していったものとは一体何だったのか。最後にもう一度逢うことが叶った男性と友美は何を語ったのか。君との恋は甘くて、寂しくて、切なくて、愛おしい。だからこそ、君のことを忘れられない。金木犀の香る秋に読みたい恋愛小説。 文庫本サイズ/346p
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海色の声援
¥1,200
SOLD OUT
サークル名:青恋文庫 作家:逢坂海荷 イラスト:sakumin 【キャッチコピー】 想いを届かせろ。全てが終わってしまう前に。 【あらすじ】 静岡は三保の地。野球部所属の高校二年生の榎田は未だ公式戦未出場。自称悪魔の男と出会い、犠牲が出る代わりに野球が上手くなるという赤い種をもらう。引退までの一年間で何が犠牲となっていくのか。その一方、同級生の穂乃果、愛莉、宮前は榎田の異変に気づいていく。彼らの友情は榎田の正気を取り戻すことはできるのか。そして、悪魔を名乗る男の正体とは? 文庫本サイズ/254p