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融解
¥600
SOLD OUT
作家名: Anemone 歪な私と"君"の溶かし合うような日々への想いを綴った短歌を中心とした小さな韻文集。 次第に溶けて合わさっていく二つの氷を定点で捉えた写真と共に、あまりに個人的で身勝手な気持ちの数々をタイトルである「融解」をテーマに一冊に綴じました。 〜 作品より一部抜粋 〜 「ねぇ、きっと、永遠なんてないからさ君の骨を一本ちょうだい」 「舐めかけのトローチみたいな三日月を舌でパリンッと割って分け合う」 【概要】 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 7×14.5cmサイズ 36ページ 表紙(マーメイド紙) 本身(マット紙) リボン綴じ(オーガンジー) ※ホームプリント、手製本です
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ASHIMOTO
¥800
SOLD OUT
作家名: Anemone 紹介文: - 街の肌に刻まれた、模様に出会う。- 道路の白線に刻まれた亀裂が作り出す「模様」。そんな模様を切り取ってみたら、まるでひとつのアート作品のように見えてきた。この本はそんな「白線の模様」を一冊にまとめたものです。 【概要】 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ A5サイズ 32ページ 表紙(マット系アート紙) 本身(マット紙) レーザープリント 帯(トレーシングペーパー) ※帯のみホームプリントです ※縦に巻かれた白線の模様は一冊ずつ違い ランダムでお送りします。
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愛は恋情に非ず
¥200
SOLD OUT
サークル名:鶏林書笈 作家・アーティスト名:ゆきやまイマ 100人に1人いると言われているAセクシャル。これまで、こうした人々に言及されることはありませんでした。しかし、これまでの歴史をAセクシャルの視点で振り返ってみると、こうした人々の活躍が浮かび上がってきます。本書では、日本と韓国の歴史についてこうした視点から考えてみました。
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掌上筆戯2
¥350
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サークル名:鶏林書笈 作家・アーティスト名:ゆきやまイマ 古代から現代までの朝鮮半島の史話を集めた超短編物語集。一頁一話の構成でどこからでも詠み始められます。
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Herec~一度音楽をやめた奴らが『社会人バンド』を組む話~
¥1,000
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サークル名:みちなり文庫 作家・アーティスト名:作:勝哉道花/絵:知絵 「一度やめたら、もう二度とやっちゃいけないようなものなんですか、音楽って」 かつてビックなバンドになろうと誓いあった4人の幼馴染。だがその夢は、厳しい現実を前にたった1人だけを音楽の道に残して潰えてしまう。 それから約10年後、小学生教師となった幼馴染の1人・酒井透はかつて仲間達と埋めたタイムカプセルを掘り起こしに向かう。 それが、再び自分達の元に音楽を連れてくるきっかけになるとは思いもせずに……。 好きと向き合う青春バンド小説! ▼ジャンル バンド/青春/ヒューマンドラマ ▼書籍サイズ 396P/文庫本(A6) ※本作はWebで公開していた作品の再録本となります。 ※購入特典として、Web未公開エピソードが読めるQRコードがついたカードを封入。カードの表には、本編に登場するバンドメンバーから購入者様に向けたメッセージがランダムで綴られています。
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僕、この漫画を描き終えたら死ぬ予定なんです
¥100
SOLD OUT
サークル名:みちなり文庫 作家・アーティスト名:勝哉道花 紹介文(一万文字以上の長い紹介分も可能) ある日、担当に没をくらった漫画をSNSに投稿したら、バズった。 増えるコメント、止まらない拡散にいいね達。「続きが欲しい」なんて言葉もたくさん来た。 こういうのを世間では『シンデレラストーリー』と呼ぶのだろう。漫画家なら、誰もが喜ぶ一発逆転の展開だ。 でも、僕としては「困った」の一言でしかない。 だって僕、これから死ぬつもりなんだから――。 ▼ジャンル ヒューマンドラマ ▼書籍サイズ 32P/コピー本(A6)
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一等星
¥300
SOLD OUT
サークル名:相沢プロダクション 作家名:遠藤 敦子 中学生の室伏 亜美(むろふし あみ)は両親の離婚をきっかけに父親と2人暮らしすることになったが、離婚がきっかけで亜美は学校で孤立してしまう。父親の仕事の都合でシドニーへの転校が決まり、そこでは良い友人もできる。
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ダーリン
¥300
SOLD OUT
サークル名:相沢プロダクション 作家名:遠藤 敦子 清家 咲空(せいけ さら)は高校生の頃、今村 樹(いまむら いつき)という人生で初めての恋人ができた。しかし樹と咲空は喧嘩別れしてしまう。その後の咲空の運命は……ーー。
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もし文豪たちが「五十円玉二十枚の謎」を書いたら
¥500
SOLD OUT
サークル名:夢豆文庫 作家・アーティスト名:未村明 パスティーシュ(贋作)集です。 『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』という本の方法で、『競作 五十円玉二十枚の謎』という本の課題に挑戦しています。 「五十円玉二十枚の謎」というのは、ミステリーでいう〈日常の謎〉の一つで、 「ひとりの男が毎週土曜の夕方、五十円玉20枚を千円札1枚と両替しに、書店へ来る。なぜか?」 というものです。 その答えを、4通り、大作家たちの文体模写で書いてみたのがこの本です。 ミステリーの枠は外し、ファンタジーや幻想、SFまで羽をのばして遊んでみました。 お楽しみいただければ幸いです。 (本文より抜粋) ◆その1 もし太宰治が「五十円玉二十枚の謎」を書いたら 《瓶と扉》 五十円玉が、きらいだ。 この、形が、いけません。ちまちまと愛らしく、ごていねいに穴なんかあいている。他の硬貨と並べてみると一目瞭然、大きさが、いかにもちょうどいい。おまけに、菊の花。この小菊はひどい。あんまりだ。白だか黄だか紫か知れないが、可愛いでしょう、愛してください、そんなにおいがぷんぷんと感じられ、私は思わず顔そむけて、ああ、やってられねえや、とつぶやくのです。 てのひらにころんと、五十円玉、ひとつ。 ひとつなら、いい。ひとつならかまやしない。いったいいくつあるんだか、わからないんだ。女が出ていったときに残していった、あの女――名前があるのだから、みずえと呼びましょう。みずえは、きちんとした女でした。何から何までじつにきちんとしていた。二枚あった皿、二本あったスプーン、ぜんぶ分けて、一枚一本ずつ持って出ていきました、分けられない物だけ、残して。冷蔵庫。洗濯機。あたりまえです。洗濯機を半分に割って背負って出ていく馬鹿はいません。そして、コーヒーの瓶。インスタントコーヒーの粉の瓶、ひとびん。 みずえはコーヒーが好きでした。(後略) ◆その2 もし宮沢賢治が「五十円玉二十枚の謎」を書いたら 《ホロン伯父さんの木箱》 路面がうすく光り、ひさしの上にも春の陽気がたまって、お店の戸を開けていても首にマフラーをぐるぐる巻いてふるえなくてよい季節になりました。 「伯父さん、これは表に出していいのですか」一郎がききました。 ホロン伯父さんはちらっと見て、 「ああいいよ」と言いました。「みんな出しておいてくれ」 「みんなですか。いいんですか」 「いいんだ」 それは木箱に一ぱいつまった古い本でした。 ホロン伯父さんは「よいしょ」と言いながら、本屋のひさしを棒で押しあげました。古本屋の遅い朝はこうして始まります。 遅いと言ってもそれは店の開く時刻のことで、伯父さんと一郎はもうとっくにここに来て、はたきをかけたり雑巾をかけたり、包みをほどいたり、また包んだりしていたのでした。 一郎は木箱をかかえて表に出ました。お店はうるさい大通りに面しているのですが、このお店やまわりの同じような小さい古いお店の前だけは、なぜだかほっと少しばかり、しずかな空気に守られているようです。 (これをみんな出してしまうなんて、伯父さんはほんとにいいんだろうか) それらの本がホロン伯父さんの本棚に長いこと並んでいたのを、一郎は小さいときから見て知っていました。ときどき伯父さんがその一冊を抜き出しては、表にしたり裏にしたりして、また大切そうにしまうのも見ていました。 古書店はもちろん、仕入れた古書を売っているのですが、最近、伯父さんはその自分の大切な蔵書も、少しずつ売りに出しているのです。(後略) ◆その3 もし内田百閒が「五十円玉二十枚の謎」を書いたら 《鰈[かれい]》 池袋駅の地下構内は天井が低くて、人が動いても、空気が動かない。 細長い地下通路が並行して二三本あるけれども、どれも海底にもぐったようで、昼間でも音が遠くにこもって聞こえて息苦しい。そこいらに鰈が小さい目をして貼りついていそうな気がする。 券売機で切符を買おうとして財布を開けたら、五十円玉が二つ入っていた。 私は財布に入れておく五十円玉は、一つと決めている。二つあるとどうも落ちつかない。五十円玉は五円玉のように平らに切れていなくて、少し厚みがあるから、中の穴に水がたまりそうな気がする。知らないうちにその露がレンズになって、光を集めて、財布の中で自然発火でもしだしたらあぶない。かといって一つもないと、細かい買い物のときに不便をする。 私は財布にあった五十円玉を早く始末してしまおうと思って、一つ券売機に入れた。 たしかにちゃりんと音がしたのに、機械の表示が動かない。おかしいと思って、下の受け口をのぞいてみたり、機械をとんとんと叩いてみたりしたけれども、何にもならない。ちゃりんと機械の中に落ちて、外には落ちていないのだから、やっぱりおかしい。私の五十円玉が消えてしまった。 するといきなり耳もとで声がした。 「消えてませんわ」 私が驚いてふりむくと、黒い羽織を着た美しい女がすぐそばに立って笑っていた。女は私の袖を引くようにして 「さあ行きましょう」 と言った。 どこへ行くのだかわからないけれど、女がすたすた歩きだすから、私もついていった。女のうなじはほっそりして美しかった。 女は軽く褄をとって階段を上り、駅の外に出た。街路樹の桜が葉桜になっていて、風もある。 「どこへ行くんだ」 女に追いつきながら私が訊いた。女は黒々とした目を見はって 「まあいやだ」と言った。「両替に行くんじゃありませんか」 両替と言われたって、私には両替する用事なんかない。電車に乗って、人に会いに行くはずだったのだが、それが誰だったのか忘れている。 ガラスの扉が二重になっている大きな書店へ、女はどんどん入っていって、私もついていった。 会計の列に人は並んでいなくて、すぐ私の番が来た。女はまた私の袖を引いて 「さあお出しなさい」 と言った。 「何を」 「こまった人ね、さっきのよ」 何が何だかわからないからぼんやり立っていると、売り子のほうも片づかない顔をしている。きゅうにまわりの空気があいまいになって、壁一面の本棚にしまりがなくなってきた。 「早く」 女にせかされて、私はしかたなく右の手を開いた。とたんに私はぞっとして、頭から水をかぶったようになった。 私の右の手のひらの上に、五十円玉が二つある。(後略) ◆その4 もし半村良が「五十円玉二十枚の謎」を書いたら 《踊る千円札》 「じゃ、お疲れ」 「どうも」 軽くグラスを合わせ、一息にハイボールをあおる。とたんに体内で泡がはじけ散る。〈五臓六腑にしみわたる〉とはおそらくこういうことをいうのだろうと、手の甲で口を拭いつつ田端淳一は思う。 向かいに座っているのは大塚耕司。掘りごたつの個室、チェーン店の居酒屋だ。時は四月、土曜の夕刻、場所は池袋。どこからどう見ても休日出勤の帰り、さえない中年上司が頼りない新人を誘って一杯やりに入ったというありふれた光景だ。 「で、話の続き」すでに上着を脱いでワイシャツ姿の大塚がネクタイをゆるめながら言う。「けっきょく結論は出てないってことか」 「そうみたいです」 「これだけウイルスウイルスって騒いでおいてか」大塚の口調には、軽蔑より落胆の色がある。 「つまりですね」田端はメモをとり出そうとタブレットに指を走らせる。「〈生命〉の定義には、三つの条件があるらしいんですね。簡単に言うと……あ、ありました」田端の指が止まった。「ええと」 1.遺伝子を含む「核」を持つ。 2.代謝を行なう。 3.増殖する。 「代謝というのはあれか。栄養摂取や排泄だな」 「呼吸も含まれます。ようするに体内でのエネルギー変換ですね。ウイルスは1と3の条件を満たしますが、代謝はしないので、2は満たしません。そこが細菌と違うところです」 「ウイルスは自力では増殖できないはずだが?」 「宿主、つまり人間なり鳥なりの体内に入れば自己複製できますから」 「それを増殖とみなすと」 「そうです」 「ふうん」大塚は眉を寄せている。「そこは譲歩していいのか」 「みたいですね」 「結果、『遺伝子を持ち』『増殖はする』が、『代謝を行なわない』ウイルスを、生命体と呼んでいいのかどうかについては、いまだに議論が分かれるらしいです」 「なるほどな」 掘りごたつのテーブルの上には、袋を破られたおしぼりが二本だけ。いわゆる〈お通し〉の類も来ておらず、割り箸もまだ割られないままだ。 「さっきの三つの条件、もう一度言ってくれ」 「〈生命体〉のですか」 「そう。遺伝子を持ち、代謝を行ない……」 「増殖する」 「分裂して数を増やせば、〈増殖〉でいいんだな」 「はい。べつに性をともなう〈繁殖〉でなくていいんです。〈個体〉の数を増やせば」 「その〈個体〉どうしがくっついて、二つが一つにとか、多数が一つにとか、数が減ってしまう場合はどうなんだ」 「それはですね」田端は言いよどんだ。「そういうのは想定してない、みたいです」 「また〈想定外〉か」大塚が片手で額を押さえる。「勘弁してくれ。想定してくれよ。ありとあらゆる可能性を」 「まあまあ先輩……ハイボールおかわり、頼みましょうか?」 「考えてみろよ。どの国も競って探査機を飛ばして、銀河系を調べ上げようとしてるんだぜ? 宇宙のどこかに〈生命〉の、とくに〈知的生命体〉の存在する可能性はないかって。その前に、足もとを見ろと言うんだよ」 「『灯台下暗し』ってやつですね、まさに」 「遺伝子を持たず、代謝も行なわず、増殖するかも微妙だが、知性を――それも言っちゃなんだがまあまあ高度な知性を持つ〈存在〉が、この地球上にすでにいたとしても、そいつを人間は、〈生命〉とは認めてくれないのか」 (先輩、今日は酔いの回るの早いな) 田端はこっそり、自分の胸の中だけでため息をついた。 (ストレスたまってるんだな。まあおれも同じだけどな……)(後略)
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Destiny〜微睡む夢に重なる想い
¥500
SOLD OUT
サークル名:葵月 作家名:冴月希衣 紹介文 【再生の花、睡蓮が時を繋ぐ恋愛ファンタジー三部作】 第一部:古代エジプト(ツタンカーメン、アンケセナーメン) 第二部:19世紀フランス(モネ) 第三部:現代日本 切なさと優しさが混在する三つの時代の純愛譚、お楽しみください。 【試読:第二部より抜粋】 初夏。むせるような草いきれが全身を包み込んでくる朝、薔薇の生い茂る小径に小柄な姿が現れた。人工的に作られた池のほとりまで慣れた足取りでやってきたその人物は、ひとりの男に呼びかける。 「クロード!」 「あぁ、シャルロット。おはよう」 「やっぱり、ここに居たのね。あなたに手紙よ、ムッシュ。差出人は、わかるでしょう? ギュスターヴよ」 ギュスターヴからの手紙を、男はいつもすぐに読む。小難しい表情で手紙を読んでいる寡黙な男は、絵を描くためにジヴェルニーにやってきた。 壮年の画家の名は、クロード・モネ。 村の土地を購入し、川から水を引いて自身の理想の庭と池を造営中である。自身が造営した庭を、クロードは『水の庭』と呼ぶ。彼がその芸術性に傾倒している東の島国、日本の庭園を模しているらしい。 しだれ柳が水面に影を落とす池には『太鼓橋』という名の緩やかな傾斜を持つアーチ型の橋がかかり、大気の揺らめきがさざめく水面を埋め尽くすように浮かんでいるのは、一本の深い切れ込みが入った、特徴のある睡蓮の葉。この睡蓮のために付近のリュ川から水を引いて造られたのが、彼の『水の庭』だ。 「……ほう。ギュスターヴは、明後日、こちらに来るらしい」 「そのようね」 ぼそりと零れ落ちた低音に、まだ青葉のみの睡蓮を見つめながらシャルロットは短く返す。クロードに手紙を寄越したギュスターヴの来訪予定は彼女も知っていた。画家へのものとほぼ同内容の書簡が彼女にも届いていたのだ。 ふたりに書簡を寄越したギュスターヴ・カイユボットは、今、おもむろに池のスケッチを再開したクロードのパトロン。かつては、ドガやルノアールとともに展覧会に出品していた写実主義の画家だったが、近年、絵画のコレクターへと転身した。パリの上流階級出身の資産家だ。 シャルロットを緑豊かなジヴェルニーに連れてきてクロードに引き合わせた実業家は、彼女の恋人でもある。
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知り初めし恋に萌ゆ萌ゆ
¥300
SOLD OUT
サークル名:葵月 作家名:冴月希衣 【平安時代はお好きですか?】 中納言家の若君、源希(みなもとののぞむ)は帝にお仕えする六位蔵人。 花形の官職に十六歳で任じられた将来有望な少年は、ある日、母の客として邸を訪れた帥宮(そちのみや)と出会う。 弓の稽古に苦戦していた希に優しく手ほどきをしてくれる宮様。麗しく知的、弓の名手でもある貴公子にのぼせ上がってしまった希は、宮に会うためだけに彼が通う姫の邸周辺に出没し始める。 自分が美形だとちゃんとわかっている悪い大人と、純粋培養の若君。 雅で異端な平安BL絵巻、紐解いてみませんか? 【試読:第一章より抜粋】 希のものよりも大きな手が差し出され、おずおずとそこへ伸ばした少年の手はすぐにきゅっと包まれた。途端、さあっと吹きつけてきた秋風が希に薫香を届ける。 沈香かな? それに丁子、甘松香、甲香だろうか。宮様は、御姿が美しいだけでなく、身に纏われる香までが艶かしいのか。 帥宮の衣に焚きしめられた香の芳しさに、白雪のごとき頬をぽうっと染めた少年は、早速、弓の指南を開始した麗人の的確で優しい手ほどきに、どんどんと顔の熱が上がっていくのを止められない。希の手を取り、肩と胴を支え、腕の位置を直してくれる指南の最中、どんどん、どんどんと体温も上がっていく。 「そう、良い子だ。其方は、筋が良いな。まこと、教え甲斐がある」 耳元で囁かれる艶声をもっと聞いていたくて、熱をもった頭と身体を奮い立たせた希は貪欲に教えを吸収し続ける。 「ふふっ。だが、覚えが良すぎるのも考えものであるな。他のことも教えたくなってしまうではないか。危うい子だ。この私に別れがたい感傷を与えるとは、なんと危うく、愛(う)いことよ」 手ほどきの最後、帥宮から与えられた甘い声と軽い抱擁が、別れた後もしばらくの間、少年の白皙の頬に朱を散らし続けていた。 風に踊る紅葉よりも更に朱い熱情。それは希が初めて体感した本気の恋の奔流だった。
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魔女マルメイソンと騎士と生首
¥300
SOLD OUT
サークル:hs* 作家:せらひかり #novel首塚の30題を使用した連作小説の再録。魔女マルメイソンはある日生首になってしまう。何が起きたのか知るため他の魔女を探すが。ちょっとほのぼの不条理メルヘン。先生とマルメイソンについて一話書き下ろしつき。 A6サイズ本文56p
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ツカノマアタラクシア
¥300
SOLD OUT
サークル:hs* 作家:せらひかり 「文体の舵をとれ」のお題で書いた掌編短編集。文体の縛りがある中で、ゆらゆら駆け回る物語。だいたいすこしふしぎ。 A6サイズ本文65p 自家印刷手製本
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海色の声援
¥1,000
SOLD OUT
サークル名:青恋文庫 作家:逢坂海荷 イラスト:sakumin 【キャッチコピー】 想いを届かせろ。全てが終わってしまう前に。 【あらすじ】 静岡は三保の地。野球部所属の高校二年生の榎田は未だ公式戦未出場。自称悪魔の男と出会い、犠牲が出る代わりに野球が上手くなるという赤い種をもらう。引退までの一年間で何が犠牲となっていくのか。その一方、同級生の穂乃果、愛莉、宮前は榎田の異変に気づいていく。彼らの友情は榎田の正気を取り戻すことはできるのか。そして、悪魔を名乗る男の正体とは? 文庫本サイズ/254p
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金木犀の香り
¥1,000
SOLD OUT
サークル名:青恋文庫 作家:逢坂海荷 イラスト:管澤捻 【キャッチコピー】 あなたの恋は、きっとその人に残り続ける。 【あらすじ】 一人の女性(友美)の恋愛を男性視点で追った連作短編集。友美に恋した男性たちは別れた後も想いと後悔を抱えながら生きていく。友美が残していったものとは一体何だったのか。最後にもう一度逢うことが叶った男性と友美は何を語ったのか。君との恋は甘くて、寂しくて、切なくて、愛おしい。だからこそ、君のことを忘れられない。金木犀の香る秋に読みたい恋愛小説。 文庫本サイズ/346p
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女子大生純文学作家は異世界に転生したくない!?
¥880
サークル名:水と心 作家:水野心 イラスト:猫城寺ユーリ 高橋ひまりは、十八歳の時、自らの青春を小説にし、賞を受賞。大学にも合格し、春に東京に上京。学生生活と文壇デビューを期待した。その幸せは約束されていたはずだった。しかし、突然発生したCOVID-19。世界はパニックに陥り、ひまりは 大学二年の春からずっとリモート授業となり、味気ないぼっちの毎日。勉学による精錬も恋物語(ロマンス)も皆無だった。ほんとうに。 ひまりの心は自然と文学に向き、数多く小説を書いた。それを自分に賞を与えた出版社に持ち込んだ。そしてこう言われる。 「もう純文学の小説は売れない、COVID-19も落ち着いた今、人は出会いを求めている!、マッチングアプリでたくさんの人とデートして体験記を書く!、これで決まりだよ!、『文科系エロ』ってやつだね」 文学まで終わったなんて! その時、ひまりに声をかける人物が現れた。理工学部の准教授・十郷だった。 「君、異世界に行ってみないか?」
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六月の花嫁
¥600
サークル:文章・創作のサークル 作家:紫りえ Ni ふむふむともくもく 2020年。世界に蔓延したウィルスの影響により、 女性は結婚式を延期せざるを得なくなる──。 2019年。婚約し、男女が共に住むことへの碧き感情の花嫁の手記。 花嫁の日常の機微はいつしか世界中に蔓延したウィルスの下を書き記す。『六月の花嫁』 緊急事態宣言、2度目の緊急事態宣言、そして、春の物語の短編集。 ■ 2020/04/26 結婚式を延期にした日 当初、緊急事態宣言が延期になるかどうかを見届けてから決定するつもりでいた。それが私達の挙式のぴったり1ヶ月前だったし、第三者的な判断基準になると思った。 挙式までの準備期間としては既に2ヶ月前を切っていた。どんな式を挙げるのかによるけれど、この時期には手作りしたいものを進めたり、当日必要なものを購入したりする。前撮りもこの時期にする人が多い。人によってはエステに通う人もいるし、CD原盤を探したりとなにかと奔走する時期になる。 母にはアートフラワーブーケを作ってもらう予定で、そのブーケを前撮りに使って写真に残しておきたいと思っていた。 けれど、アートフラワーを売る大きなお店が休業になってしまった。オンライン販売はしているが、母は「ボリュームも色も見ながらでないと難しい」とオンラインのリスクの高さを懸念していた。 一方で、前撮りスタジオとも連絡がつかなかった。緊急事態宣言が解除されたとしたらその翌日が予約日だった。緊急事態宣言が出されるよりも前にたまたまその日に予約を入れてしまっていたのだが、お店自体もその日から再開予定となっていた。 緊急事態宣言の解除と継続、どちらにしてもスタジオが当日やるのかやらないのかわからなかった。予定通りやるとしたら、母のブーケはできていないから、そのブーケを使った撮影はできない。やらないとしても、いつスタジオが開くのかもわからない。未来に予約を入れたとしても、アートフラワーのお店の方もいつ開くかもわからない。 何も予定がたたなかった。そのことに気付いたのは仕事の合間の昼下がりだった。 友達にそのことについて愚痴をこぼした。旦那さんに言ったら、さくっと延期の話になるのが目に見えていたけど、それはまだ受け入れられなかった。でも、どうにもならないこともわかっていた。どういう返事が欲しいのかもわからなかった。ただ、もう当日どうこうだけではなく準備にまで支障をきたしていることにとても被害を受けた、という感覚だけが強く胸に残ってしまった。 ゲストの健康面や不安を考えて、というのは前提として頭にずっとあった。慶んでといってくれても、新郎新婦共に、自粛のこのご時世に普通に働く職なので尚のことだった。それでも皆がやってほしい、と言ってくれていたからつい、そこについてはみんな覚悟の上だから、とおざなりになっていた。結婚式の準備が忙しくなってくる時期だったから尚のこと、前提にありつつも横に置いていたように思う。 「完璧にやろうとしたら支障がありすぎる」 と友人からは返答があった。 あなたは他人を跳ね除けて理想を求める人、という言葉に聞こえてしまった。 「元々なら当たり前にできたことを、その中で何は死守して、何は譲ってもいいのかを考えるのは辛いね」 何かを捨てることが前提の彼女の優しい言葉は 昔流行った、ラストシーンにはベランダから転落する以外の選択肢がなくなるゲームのようだった。 そのあとも私の愚痴に「そうだよね」と繰り返して返事をくれた。もうそれ以上に言いようがなかったのだと思う。 帰る前に旦那さんに、絵文字だけを羅列した象形文字みたいなメッセージと共に、「詰んだ」と送った。文字に起こすには 未来の予定のために事前にこれをしてあれをしてと遡って話をするのが大変だった。結婚式はそういうものだ。当日に合わせて時期を決めてある程度機械的に動くのだ。 帰ってから一連の こういう準備の支障が出るのだという話をした。とにかくどこもかしこもお店がやっていないから、もし6月の挙式までにコロナが収束したとしても、準備のほうが全くできないということが伝わっていればいい。その時のわたしにはそれが1番の理由だった。周りのことを思うだけの余裕がなかった。 私にそれだけ、「周りを気にしないで自分の思うようにやっていい」と全力で伝えてくれた友人がいたからだった。 「どうしようか。延期するしかないかなあ」 まあそうだろうね、と言葉にまだ出したくなかった。代わりに今までなぜか出てこなかった涙が溢れてきた。 普段以上に手を洗ってうがいをしていた私を狭い洗面所で、旦那さんは何も言わずに抱きしめてくれた。何が悲しいのかわかるようなわからないような。延期は視野に入れていたけど、まだそう思えていなかった。本当に延期を決定することにやっとやっと向き合った結果がこの涙なのだ、と思った。 肩に顔をくっつけて、黙って泣いていた。
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四節の輪舞曲(ロンド)
¥600
サークル:文章・創作のサークル 作家:森野ひよこ 季節を「四節」とし、5つの散文詩と4つの短編集を収録 ■散文詩「旅立ち」 空気の冷たい午前4時 騒がしいほど静寂な世界で目が覚める 私は、軽く髪を梳き 着替え 顔を洗う 目の前にある左右対称な私の顔 声の出ないその唇が言葉を紡ぐ Are you happy? 私は答えず口の端を上げる 彼女も気づいて笑い返す 鍵を開け 外へ出ると 寝過ごした太陽が慌てて起きだした 私は見つからないように 反対方向にアクセルを踏む どこへ行こうか 今日は家出記念日 ■「桜との約束」 三月六日。 大学の合格祝いとして家族で外食した日、両親から離婚することを告げられた。 父がほとんど家に帰らないことも知っていたし、どうやら他に女性がいることも知っていた。そのため、離婚の話自体は、ああ、やっぱり、とすんなり受け入れた。 そして、自分でも驚くくらい冷静に、私の学費のことを聞くことができた。 「明莉は心配しなくて大丈夫よ。大学の授業料はお父さんが出してくれるから。生活費はお母さんがなんとかするわ」 母は安心させるように私に微笑んだ。おそらくその結論が出るまでは、かなり労力を必要としただろう。母は私に気を使わせまいと、何でもないようにふるまっていたが、表情にはいつも疲労が濃く表れていた。 「それで、明莉。本当は一人暮らしをさせる予定だったのだけど、さすがにそれぞれの場所で生活するのは、ちょっと辛くて……」 なんとかすると言っても、今までスーパーのレジ打ちだったのだ。当然だと思った。 「いいよ。一緒に引っ越そう」 私は明るく言った。私と母は翌日、大学近くのファミリー向けアパートを契約し、四月二日に引っ越すことに決めた。 祖父が危篤のため、実家へ行かなければならなくなったのは、離婚の話から三日と経っていない頃だった。顔を覆ったまま、心底嫌そうに母は告げた。 母は名家の長女だったが、半ば駆け落ちのように父と一緒になったと聞いている。だから、盆正月に帰省することはおろか、一切連絡を取ることが無かった。母の弟にあたる夫婦が実家で暮らしている、ということくらいしか知らなかった。連絡先も知らせていなかったらしい。 だが離婚の手続きの際、他に頼る先が無く代々お世話になっている弁護士に連絡を取ったため、そこから祖父の危篤を聞いたそうだ。祖父からはどうしても一目会いたいと常々依頼されており、いつ何があってもおかしくない状況の今、話ができるうちにどうしても会ってほしいとのことだった。 離婚の財産分与の相談をしていることもあり、強く突っぱねることができず、母と私は実家へ向かうことになった。 実家につく前から、申し訳なさそうに何度も母が謝る理由は、実家についた瞬間理解できた。叔父・叔母の敵意のこもった視線を受け、私たちは小さくなりながら挨拶をして敷居をまたいだ。 着いて早々、私たちはベッドで眠る祖父の顔を見た。顔には多くの皺が刻まれており、深い皺と見紛う小さな目は閉じられていた。酸素吸入器を動かす機械音が聞こえるくらい、安らかに眠っている。主治医の大田先生の話では、もう内臓の動きが悪く、時間の問題らしい。数時間ごとに目を覚ますとのことだったので、無理やり起こすのではなく、自然と目が覚めるのを待つことになった。 叔母がお茶を入れて、母と私の前に無造作に置く。母は、ありがとうございます、と丁寧に頭を下げた。私もそれに習い深々と頭を下げる。 「保代さん、明莉はこの家にはじめて来るの。良かったらお庭を見せてあげても良いかしら」 「あら、せっかくお茶を用意したのだから、せめて美里さんは召し上がって。ひさしぶりにお会いしますし、積もる話もありますし。明莉ちゃんはいってらっしゃい」 叔母は作り笑いをしたまま、私たちの顔を見比べる。叔父は足と腕を組んだ姿勢のまま、顎を横へ降った。勝手に行け、ということだろう。母が私に小さくうなずく。私は、逃げるようにその場を去った。 立花家の庭は広かった。冬でも緑色をした木々、石灯籠、大きな池の中央には島があり、そこへ続く橋が架けられている。島には一部屋分くらいの簡易な建物があった。壁が無く、柱と屋根と床がある。能舞台というよりは、お茶を飲みながら周囲の景色を鑑賞するのだろう。その建物の向こう側にも橋が架かっていた。 私は橋を渡りながら、体を震わせた。三月とはいえ、まだ肌寒い。コートを着ているものの、水辺から冷気が上がってくる。 島から向こう岸へ渡ると、そこには大きな樹が枝を広げていた。樹齢何百年と言われても素直に信じられる。柳だろうか。枝先は立花家の塀を軽々と超えて、外の大通りまで伸びている。 葉のない枝にそっと顔を近づけると、赤いつぼみがあった。ああ、しだれ桜だ。 そこまで考えて、桜の幹に手を添えている人影に気づく。同級生くらいだろうか。ワンピースにボレロ、蝶々結びの赤いリボン。お嬢様高校の制服といったいでたちだ。私に気づかないのか、ずっと彼女は樹のそばを動かない。肩まで伸ばした真っ黒な彼女の髪が、冷たい風に揺れる。私は思わず、コートを握りしめた。 「ねえ、寒くないの?」 彼女は驚いたように、振り返る。無遠慮に顔を近づけ、私を上から下まで眺めると、彼女は口を開いた。鈴のような、美しい声だった。 「へぇ、あなた、私が見えるのね」 彼女は興味深そうに私の顔を覗き込む。彼女の瞳が、光の加減で深緑色に見える。